逆上した燕山君(ヨンサングン)/朝鮮王朝歴史全集5

母親の死の真相

本当は、成宗も廃妃の息子を次の王にしたくはなかったのです。しかし、長男を大事にする儒教社会のしばりがあり、性格が粗雑で学問も嫌いだったけれど、長男ということで燕山君が後継者になりました。
成宗は1494年に亡くなり、燕山君が18歳で10代王になりました。彼こそは、朝鮮王朝で最悪と言われる暴君です。
政治を省みないで酒池肉林の生活をおくります。それでも、まだ母親の死の真相については知りませんでした。




ところが、冷や飯を食っていた官僚の中で何とか出世したいと考える者がいて、燕山君に取り入ろうとして「実は母上が……」と暴露してしまいました。事実を知って燕山君は逆上し、朝鮮王朝始まって以来の大虐殺事件が起きます。
斉献王后の死罪に関わった人たちは皆殺しにされました。燕山君は、すでに死んでいる人の墓を暴いて首をはねています。とにかく、国中が大混乱に陥ります。
「こんな王がいては王朝がつぶれる」
そう危機感を持つ高官が増えて、クーデターの動きが出てきました。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

燕山君について紹介している『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』(康熙奉〔カン・ヒボン〕著/実業之日本社)

康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化と、韓流および日韓関係を描いた著作が多い。特に、朝鮮王朝の読み物シリーズはベストセラーとなった。主な著書は、『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『朝鮮王朝の歴史はなぜこんなに面白いのか』『日本のコリアをゆく』『徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか』『悪女たちの朝鮮王朝』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』など。最新刊は『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』

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