周囲は敵だらけ
中国大陸の固有の民族である漢民族を政治の表舞台から排除したために、政治が停滞することが多かった。やはり、モンゴル出身の高官だけでは政治を奔放に動かすことは困難だった。
そこで、文字が自在に操れて知識も豊富な高麗王朝出身の宦官たちが重用されるようになっていた。
しかし、高龍普にとって予想外のことがおきた。
奇皇后が高官たちの心をつかむというところまでは予想できたのだが、なんと12代皇帝のトゴン・テムルまでもが奇皇后に夢中になってしまった。
トゴン・テムルの動きは早かった。
彼はすぐに奇皇后を側室にした。
しかし、奇皇后に難敵が現れた。
トゴン・テムルの正室のタナシルリだった。
彼女は奇皇后に激しく嫉妬した。
このことが奇皇后の立場を危うくした。
なぜなら、タナシルリの父は元で一番の重鎮だったエル・テムルだったからだ。
タナシルリはエル・テムルの娘であったからこそ、皇帝の正室になれたのだ。いわば、奇皇后は元で一番の名門一族も敵にしてしまった。(ページ3に続く)