張禧嬪を死罪にした
次々と高官たちが反対意見を述べる。
「母が死罪になれば世子が悲しみでからだを壊してしまいます」
「臣民たちは世子のために命を投げ出す覚悟があり、命令に従えない場合もあります」
「臣下の者たちが申しているのは人情です。なにとぞ考えを変えてくださいませんか」
しかし、粛宗は一歩も引かず、高官の意見に反論し続けた。
「余がこんな命令をする理由はほかでもない。国家のためであり、世子のためなのだ。余が生きている今でも邪悪なことが起きているのに、彼女(張禧嬪)を生かしておけば、あとでどれほどのわざわいとなることか。なんと恐ろしいことか」
「世子は善良だが、その母親は悪徳の人物である。(生かしておくと)そのわざわいがますます手に負えなくなってしまう」
実際に『朝鮮王朝実録』を読むと、粛宗と高官の対立が延々と続く。それでも最後は王が強い。結局、粛宗は「死罪以外に他の方法がない」と強硬に言い切って張禧嬪を死罪にした。高官たちのどんな反対にも意見を変えなかったのだ。
粛宗は、経済の活性化や農地の拡大を実現して、政治的には業績が多かった。部下の意見にはまったく耳を貸さなかったが……。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化と、韓流および日韓関係を描いた著作が多い。特に、朝鮮王朝の読み物シリーズはベストセラーとなった。主な著書は、『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『朝鮮王朝の歴史はなぜこんなに面白いのか』『日本のコリアをゆく』『徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか』『悪女たちの朝鮮王朝』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』など。最新刊は『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』。
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