凡庸な権力者
当時の尹元衡は、王妃であった姉に引き立てられて大出世を果たしていた。とはいえ、本人に能力があったわけではない。
そういう意味では、凡庸(ぼんよう)な権力者であった。
その尹元衡は、とても美しい妓生と評判だった鄭蘭貞の姿を見て一目惚れして、すぐに彼女を妾として迎えた。
鄭蘭貞は、文定王后に会うことを望んだが、妾である彼女が会うことはできなかった。それでも、彼女は尹元衡に必死に懇願して許可を得た。
当時、文定王后が世子を疎ましく思っていたことを感じた鄭蘭貞は、文定王后と組んで世子の命を狙った。しかし、それは失敗してしまう。
無事に命の危機を免れた章敬王后の息子は、12代王・仁宗(インジョン)となるが、即位からわずか8カ月で世を去ってしまう。
その原因については、文定王后が毒殺したのではないかと言われている。(ページ3に続く)