元の皇帝トゴン・テムルの正室だったタナシルリは、奇皇后に執拗な嫌がらせをした。思い切り鞭で叩いたり、熱した焼きごてを肌にあてたり……。正気とは思えなかった。しかし、タナシルリの横暴も長く続かなかった。
皇帝の息子を出産
タナシルリの父であったエル・テムルが急死した。
後ろ楯を失ったタナシルリ。2年後には実の兄が実権を握ろうとしてクーデターを起こしたのだが、失敗してしまった。
結局、タナシルリには兄のクーデターに加担したという容疑がかけられ、彼女は宮殿を追放されて命を落とした。
皇后の座が不在となった。トゴン・テムルは真っ先に、寵愛する奇皇后を正室にしたいと思った。
しかし、モンゴル出身以外の女性を正室にすることに高官たちがこぞって反対した。トゴン・テムルはその反対を無視することができず、名門部族出身のバヤン・フトゥクを皇后として迎えた。
そんな最中の1338年、奇皇后はトゴン・テムルの息子アユルシリダラを出産した。これで、トゴン・テムルはますます奇皇后を寵愛するようになった。(ページ2に続く)