韓国で大ヒットした話題の宮廷歴史映画『王になった男』。舞台となるのは、朝鮮王朝15代王・光海君(クァンヘグン)の治世。人気俳優イ・ビョンホンが光海君とその影武者になる道化師の2役を演じ、1人の人間の目線から王の、政治の、あるべき姿を訴えかける。1200万人を動員したメガヒット映画の魅力を紹介しよう!
歴史の謎に迫る緻密で大胆な物語
絢爛豪華な朝鮮王朝時代、実在した15代王・光海君の秘密に迫る、史実とフィクションを織り混ぜて作り上げた重厚な歴史大作である。韓国では2012年秋に封切られ、宮廷エンタテインメントとしての面白さや、暴君と聖君の2つの役を演じ分けながら政治のリーダーシップを模索するイ・ビョンホンの名演技が共感と感動を呼び、観客動員数1200万人超という国民的大ヒットを記録した。
2012年10月30日に行なわれた韓国のアカデミー賞といわれる大鐘賞映画祭では、史上最多の15部門を受賞するという快挙も成し遂げている。
理想を見失った光海君と正義感あふれる庶民のハソン。1人2役で表裏一体のキャラクターを演じたのは、時代劇初挑戦となるイ・ビョンホン。ときにシリアスに場を引き締め、ときにユーモラスな雰囲気で場をなごませた。デビュー初期には見ることのできなかったコミカルな演技も取り入れ、緩急を効かせる巧みな演技は、名優の風格を感じさせる。
権力や利権争いに終始する政治家や役人たちを糾弾し、民の幸福を第一に置くことの大切さを説いた宮中での演説シーンは、名場面として語られていくことだろう。私たちが求める「真のリーダー像」が、国や時代を超えて、ここにある。
「誰よりもドラマチックな人生を送った暴君」と評価される光海君の半生を、魅力的な人間ドラマに仕上げた脚本は、映画『オールド・ボーイ』で高い評価を受けたファン・ジョユンが担当。卓越したストーリー展開は、チュ・チャンミン監督が指揮を執った。
17世紀初頭に16年という短い期間在位していた光海君は、時代の暴君か悲運の君主か、過去と現代で極端に評価が分かれる人物である。暗殺の脅威にさらされて暴君となったが、最近では、実利外交の対外政策や法制面での秩序安定策が再評価され、改革派君主としての認識が広がっている。
その光海君が残した日記の中には、「隠すべきこと、残すべからず」という謎めいた一文がある(「朝鮮王朝実録」に記載)。この歴史の闇に消された「隠すべきこと」という空白に注目し、独自にイマジネーションを膨らませたのが、本作である。「光海君の代役を果たしたもう1人の人物がいた」という新鮮な発想を加えたことで、魅力的な歴史フィクション、極上のエンタテインメント作品になっている。(ページ2に続く)
光海君(クァンヘグン)と仁祖(インジョ)の激闘1
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