寺を詣でる風習は残った
国教が仏教から儒教に変わった影響は大きかった。特に、食生活が変化した。仏教は殺生を禁じているので、そのまま仏教が重視されていれば朝鮮王朝時代に食肉の習慣があれほど根づくことはなかっただろう。
韓国料理は焼肉、というイメージが強いが、それは朝鮮王朝時代に仏教が衰退したことと決して無縁ではないのである。
ただし、表向きはそれほどに仏教を取り締まっていながら、王族の中には仏教を信奉している人が意外と多かった。
韓国時代劇を見ていると、高貴な人が願いごとをするために山中の仏教寺院を訪ねる場面がしばしば出てくる。政治的に迫害されていても、仏教を信じる人は多くいて、お寺を詣でる風習は続いていた。
それは現在の韓国でも同様で、特に毎年11月の大学修学能力試験(全国一律に行なわれる大学入学試験で、略して「修能」と言われる)のときには、我が子のために仏教寺院で熱心にお祈りする大勢の母親の姿が見られる。
一心不乱に祈る姿が象徴しているのは、韓国の仏教はここ一番では今も非常に頼りにされているということだ。
文=康 熙奉(カン ヒボン)