自分の死の真実を追い求める記憶喪失の幽霊――。そして、霊能力をもつ「相棒」。この、きわめてユニークな主人公設定が、私たちに極上の冒険譚を用意してくれた。
アクションシーンに体を張ったイ・ジュンギ
『アラン使道伝』は、韓国でも有名な「アラン伝説」をベースに、ロマンス中心に描かれたファンタジー時代劇。
主人公2人の恋愛が軸にはなるが、ひと筋縄では行かない複雑さを感じさせる作品である。
何しろ閻魔大王や天国が登場してくるところに、まず圧倒される。「この世」と「あの世」、生者と死者の交信は、古今東西を問わず、物語として実に面白い。
それに加えて、かなえられなかった夢に対する思いなどが織り込まれることで、物語はいっそう深みを増している。
舞台は漢城(現在のソウル)から遠く離れた慶尚道(キョンサンド)・密陽(ミリャン)。また「使道」とは朝鮮王朝時代の地方官を意味する。主役のウノは、霊能力を持ってはいるが幽霊嫌いという使道なのである。
このウノを演じるのがイ・ジュンギ。映画『王の男』やドラマ『イルジメ(一枝梅)』などの作品により、アジア各国で広く人気を集めた彼にとって、除隊後の復帰第一作となる。
兵役によるブランクをものともせず、彼はファンや視聴者の期待にみごとにこたえている。
見る者を圧倒する迫力たっぷりのアクションシーンが売り物の1つだが、イ・ジュンギは体を張り、ドラマを大きく盛り上げている。
ワイヤーアクションや殺陣などのシーン撮影を、スタントマンを使わずに自演でこなしたことからも、本作にかける彼の意気込みが伝わってくる。
ヒロインの幽霊アラン役を演じるのはシン・ミナだ。アランは自分がどうして死んでしまったのかわからず、自分の正体を知るために現世をさまよう、記憶喪失の幽霊である。(ページ2に続く)