娘を思う母の気持ち
仁穆王后は強硬に光海君の斬首を主張したのだが、最後まで綾陽君は受け入れる姿勢を見せなかった。
仁穆王后としては断腸の思いだったが、次第に考え方を変えていった。
「憎き奴の斬首を聞き入れられないのなら、その代わりに、娘の待遇を最高にしてもらおう」
仁穆王后は強くそう思った。
1603年生まれの貞明公主は、1623年にクーデターが成功したときに20歳になっていた。10代の間はずっと監禁状態にあったのである。
通常の王女であれば、10代前半に名家の御曹司と結婚するのが普通だった。しかし、西宮(ソグン)に幽閉されていた貞明公主は、過酷な生活を強いられ、結婚どころではなかった。
今は状況が変わった。綾陽君が新しく16代王・仁祖(インジョ)として即位して、仁穆王后は大妃(テビ)になり、庶民に降格になっていた貞明公主も王女の資格を取り戻した。
「娘に最高の生活を送らせてあげたい」
母として、仁穆王后はそのことを強く思った
(第6回に続く)
文=康 熙奉(カン ヒボン)