とんでもない女王
三人目の女王は真聖（シンソン）女王で、在位は８８７年から８９７年までである。新羅で２３３年ぶりに誕生した女王だった。
この頃は、統一後の新羅も最盛期を過ぎて衰退していた。王位にあっても、何かと苦労が絶えなかったことだろう。
真聖女王の名は曼（マン）。こうしてみると、三人の女王はみんな名前に「曼」の字が入っている。これは、女王につながる縁起のいい漢字であったようだ。
『三国史記』の記述によると、真聖女王は８８８年、美少年数名をひそかに宮中に招き入れて淫乱したという。
そればかりか、その相手の美少年を要職につけて国政を委ねたそうだ。結果的に賄賂が横行して綱紀が乱れた。
とんでもない女王である。
８９７年、真聖女王は「最近、民が困窮して盗賊も増えている。私の不徳のいたすところで、退位して王位を賢人に譲りたい」と言って、甥に禅譲した。そして、同じ年に息を引き取った。
死期が近づいていることを知り、真聖女王は自分の愚に気づいたようだ。引き際だけは潔かった。
文＝康 熙奉（カン ヒボン）
康熙奉（カン・ヒボン）著『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』（実業之日本社）
康 熙奉（カン ヒボン）
１９５４年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化と、韓流および日韓関係を描いた著作が多い。特に、朝鮮王朝の読み物シリーズはベストセラーとなった。主な著書は、『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『朝鮮王朝の歴史はなぜこんなに面白いのか』『日本のコリアをゆく』『徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか』『悪女たちの朝鮮王朝』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』など。最新刊は『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』。
