2人の嫁
金氏は焦りを隠せなかった。
「どうにかして世子様との子供を産まなければ……」
追いつめられた金氏は、世子を振り向かせようと、蛇やコウモリを部分的に干して粉末にしたものを持ち歩くようになる。何かのまじないなのだろうが、そんなことに頼るほど、金氏は正気ではなかったのだ。
金氏の奇行はすぐに世宗の耳に入った。
結局、彼女は実家に帰らされた。
金氏の父は、娘が戻ってきたことを恥じて、娘を殺し自らの命も絶ってしまった。
金氏を廃位させた世宗は、次に奉氏(ポンシ)を世子の妻として迎え入れた。ところが、奉氏は気が強すぎて、物静かな世子との折り合いが悪かった。
世子は金氏同様に奉氏を遠ざけていく。奉氏は寂しさをまぎらわせようと、宮中で荒れた生活を始めた。
奉氏は浴びるように酒を飲み、ついには世話役の宮女たちと同性愛にふけるようになってしまった。
噂を耳にした世宗は、「世子の妻にふさわしくない不貞」とあきれ果てた。こうして金氏に続き奉氏もまた王宮から追放された。(ページ3に続く)
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