独自の企画に期待する
韓国の歴史がわからなくても、韓国時代劇には誰もが楽しめる普遍性があります。それは権力欲や恋愛、親子の情など、人間そのものの描写がいいからです。つまり、何よりも人間ドラマとして十分に楽しめるのです。
この韓国時代劇をさらに楽しむためには、たとえば朝鮮王朝の基本的な仕組みを知るといいでしょう。
朝鮮王朝は、王が絶対的な権力を持ち、その周囲を官僚たちが支えるという中央集権国家でした。さらに、身分制度が厳しく、人間は生まれながらにして不平等でした。儒教の影響で男尊女卑もありました。人間の半分はエリートになれない、という仕組みだったのです。
でも、朝鮮半島の女性はヤワではありません。とにかく、頑張るわけです。それがまた、ドラマの中で成長物語として描かれていましたし、その時代的背景がわかれば、韓国時代劇をさらに面白く見ることができるでしょう。
韓国時代劇の制作過程を見てみると、本当に大変です。地方ロケが多いので俳優は移動だけでも疲労困憊。女優は髪型や衣装を整えるのに時間がかかり、男優は乗馬や殺陣を習わなければなりません。現代ドラマより数倍のパワーが必要なのです。
それでも韓国の人たちは歴史や時代劇が大好きで、現場には「とにかく面白い作品を作ろう」というエネルギーが満ちあふれています。そんな人たちが作る興味深い作品が今後も続々と生まれるでしょう。
ただ、似たような作品が出てくることには危機感も感じます。やはり、独自の企画にこだわってほしいところです。
これからは、誰もが知っている大物だけではなく、チャングムのように、歴史の中で埋もれていた人たちが新しく発掘されて魅力的なキャラクターになることを期待しています。そうなれば、韓国時代劇はもっともっと面白くなるでしょう。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
出典=電子書籍「康熙奉講演録-朝鮮王朝で一番知りたい話」(収穫社)