ついにクーデターが起こる
燕山君は多くの人々から大きな恨みを買っていた。その中でも特に私憤を持っていたのは朴元宗(パク・ウォンジョン)である。彼の姉は、成宗の実兄である月山君(ウォルサングン)の妻だった。つまり、燕山君の伯母に当たる人物だ。朝鮮王朝時代は儒教を国教にしていたので、本来なら伯母に対して敬意を表さなければいけなかったのに、なんと燕山君はその伯母を犯してしまったのだ。その伯母は辱めを受けたことにより自らの命を絶ってしまう。
朴元宗はもともと高官だったのだが、燕山君に敬遠されて地位を失ってしまった。そんな彼に近づいてきたのは、燕山君に批判的な態度を取り、左遷させられた成希顔(ソン・ヒアン)だった。2人は燕山君を追放するための計画を立てた。そのクーデターを強力な布陣で行なうために、朴元宗たちは、当時、とても人望の厚かった柳順汀(ユ・スンジョン)に計画を打診した。柳順汀は考えた末に朴元宗たちに協力することにした。
その後、彼らは燕山君追放のためのクーデターを起こした。本来なら、側近や兵士たちが命を懸けて王を守ろうとするのだが、暴君として多くの命を奪ったりなど酷いことをしてきた王を誰も守ろうとはしなかった。つまり、燕山君は側近たちから完全に愛想を尽かされてしまい、クーデターによって廃位となったのである。
そのクーデターが起こったのが1506年で、同年に暴政によって人々を苦しめた暴君は江華島(カンファド)に流罪となり、その2カ月後に世を去った。その死因については病死という説と、毒殺されたという説の2つがある。
燕山君が王位を追われたことにより、彼と一緒に放蕩三昧をした「朝鮮王朝3大悪女」の1人である張緑水(チャン・ノクス)は斬首に処され、王妃だった慎氏は廃妃となり、彼女の実家も悲惨な目にあった。さらに、慎氏の兄である慎守勤(シン・スグン)はクーデターの際に真っ先に殺されている。
これだけ多くの人に迷惑をかけてきた燕山君は、朝鮮王朝27人の王の中で、今でも一番評判が悪い王である。
文=康 大地(コウ ダイチ)